関節リウマチ治療のアルゴリズム
関節リウマチの標準的治療は、「関節リウマチ診療ガイドライン2020」に沿って行います。3段階の治療(フェーズ 1から3)から構成されていて、第一段階(フェーズ1)では、関節リウマチの診断確定後より、最初に、メトトレキサート(MTX)を含めた従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)と呼ばれる内服薬での治療を開始します。特に、MTXは、高い有効性、継続率、骨破壊進行抑制効果や、生活の質(QOL)・生命予後の改善効果が示され、関節リウマチ治療の第一選択薬となっています。
フェーズ1治療開始後も、治療目標(関節リウマチによる症状・徴候が消失した状態:臨床的寛解、もしくは、長期に罹患している方では活動性が低い状態)に達しない場合には、フェーズ2及びフェーズ3の治療に進みます。フェーズ2以降は、生物学的製剤(点滴・皮下注射製剤)や、分子標的型合成抗リウマチ薬(tsDMARDs)と呼ばれる、内服可能な、強力な治療を開始して、効果のある治療薬が見つかるまで治療薬の変更を行います。
治療目標の達成後は、その治療を維持・継続します。長期で病状が安定していれば、フェーズ2及びフェーズ3の治療であれば、生物学的製剤・分子標的型合成抗リウマチ薬の減量や投与間隔の延長を検討します。
生物学的製剤およびJAK阻害薬は、フェーズ2以降で使用される薬剤です。比較的高額な治療薬ですが、最近では、バイオシミラー(注射薬では、ジェネリックではなく、バイオシミラー:BSと呼びます)も登場しており、以前よりも費用負担が少なく、かつ先発品と同等の効果が得られる治療薬も登場しています。治療薬の決定には、薬剤の説明を十分に行った上で、患者様と相談し決定いたします。
目標達成に向けた治療(Treat to Target:T2T)
基本的な考え方
- 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである
- 関節リウマチの主要な治療コールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の長期的なQOLを最大限まで改善することである
- 炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である
- 疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標に向けた治療(Treat to Target: T2T)は関節リウマチのアウトカムに最も効果的である
リコメンデーション
- 関節リウマチの治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである
- 臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する
- 寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、進行した患者や長期罹患患者は、低疾患活動性が当面の目標となり得る
- 治療目標が達成されるまで、薬物治療は少なくとも3ヶ月ごとに見直すべきである
- 疾患活動性の評価は、中〜高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が新持されている患者では3〜6ヶ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない
- 日常診察における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある
- 治療方針の決定には、総合的疾活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべきである
- 設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて雑持すべきである
- 疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因、薬剤関連リスクを考慮する
- 患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療(T2T)」について適切に説明を受けるべきである
引用元:Ann Rheum Dis. 2010. 69:631-637
目標達成に向けた治療(Treat to Target:T2T)については非常に重要です。T2Tとは、関節リウマチ治療の目標を定めて行おうという考え方です。基本的な考え方4項目、リコメンデーション(推奨)10項目より構成されています。重要なことは、症状のない状態(臨床的寛解)を目指すこと、1〜3ヶ月ごとに治療の見直しを行うことです。関節リウマチの活動性評価と治療の見直しを行うには、定期的な受診と検査を受けていただくことが必要です。
実際の診療では、診断が確定し、治療を開始した際には、1ヶ月ごとの受診を行い、身体診察と関節エコー検査での関節炎の評価を行います。同時に血液検査での評価と副作用チェックを行います。関節リウマチの活動性を評価しながら、治療目標達成まで段階的に治療強化を行っていきます。また、関節破壊が進行していないかを確かめていくことも必要です。定期的な画像検査で評価を行います。